早期退職を決心した理由

好きだった仕事をなぜ早期退職しようと決心したのか。29年間務めた消防士としての生活の中で感じたことや考えたこと、私が早期退職を決意した背景にある理由を共有します。

初期の充実感とやりがい

私が消防士の仕事を選んだのは、生まれ育った田舎で公務員が最も安定した職業とされていたからです。最初から使命感や地元に対する熱い気持ちがあったわけではありません。しかし、消防士として生活していくことで人の役に立ち、感謝されることに大きなやりがいを感じるようになりました。また、訓練や勉強を通じて自分自身を高めることができ、早い段階で自分にはこの仕事が向いていると確信していました。同じ志を持った良い仲間にも恵まれ40歳ごろまでは、これらの理由で非常に充実した時間を過ごしていました。

組織の体質に対する違和感

しかし、40歳を過ぎた頃から、中堅職員としての立場で働く中で、消防組織特有の縦社会や変化を好まない体質に違和感を感じ始めました。どれだけ入念に準備し、どれだけ丁寧に説明しても通じない。少し上の人間には気持ちは伝わるものの、最終的に上まで届かず、結果、何も変わらない。そんな感じで自分が本当に正しいと思うことでも、組織の慣習や上層部の決定により実行できないことが多くありました。一般の会社でも似たようなことはあると思いますが、特に消防組織はそのような傾向が強いと年々感じるようになりました。

幹部や上司に対する失望

「思考が停止している」
淡々と前例を踏襲する幹部や上司を見ているうちにそう感じました。組織である以上、最終的に意思決定するのはトップであることに異論はありません。しかし、今の私の上司達は意見を述べることもなく、ただ淡々と仕事をこなしている毎日に見えました。きっとはじめからそうしたかった訳ではなく、何度か慣習や縦社会の洗礼を受け、徐々に思考が停止したのだと思います。以前は尊敬していた先輩も例外なくそうなりつつある姿を見ていると、個人の能力や意思に関係なく、立場が勝手にそうさせるのだと考えるようになりました。ただ、月曜の朝から下を向いて出勤する幹部を見て「自分はこうなりたくない」と強く感じるようになりました。

やりたいことが見つからないという絶望

40代後半になると、これまで感じていた違和感や疑問はさらに強まり、自分がこの組織にいてキャリアの締めくくりである50代で何を成し遂げたいか、具体的なビジョンを描けなくなりました。以前は「このような取り組みを始めたい」「こんな仕事がしたい」など、目指す将来をがありましたが、前記の状況から自分も例外なく無理だろうと将来に見切りをつけはじめている気持ちが芽生えていました。
仕事への情熱を維持するためには、明確な目標が必要ですが、結局、40代後半の自分にはそれが見つかりませんでした。加えて偉くなりたいという幹部職への憧れや考えもなくなり、この時点で、早期退職という選択が私の心の中で固まり始めました。

昇給のペースの低下の問題

ちなみに他の理由と比べると大きな理由ではありませんが、40代後半になると昇給のペースも顕著に落ちます。公務員特有の問題かもしれませんが、年にわずか千円前後の昇給というのは、責任や仕事量が増えるにつれて、55歳で昇給がストップする現実と相まって、モチベーションを上げるのが難しくなりました。

最終的に私が好きだった仕事を早期退職する決断を下したのは、以上の理由が大きいところです。これらの課題に直面し、自分自身と深く向き合った結果、新しい道を探求することが自分にとって最善の選択だと考えるようにになりました。私の経験が、同じように悩む人々の助けになれば幸いです。

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